信頼している人に、深く思い悩んでいることを思い切って打ち明けた時に
「それは贅沢な悩みだよ」と厳しい声で一蹴されたことがあります。
小学校低学年の頃でした。視界が暗くなったように感じました。
あの時の心境を言葉で表現すると、「絶望」が近いと思います。
その後も、同様の経験は続きました。
悩んで悩んで、自分でなんとかしたいともがくけれど、どうにもできない。
つらくて悲しくて苦しくて、もうどうすることもできなくなって
耐え切れず周りの大人に打ち明けた時も、かけられた言葉は
「考え過ぎ」「気にし過ぎ」「そんなことで悩む必要はない」でした。
ある時期から、本当の悩みは話さなくなったように思います。
誰かに相談する時はそれが共感を得られるかどうかをまず考えました。
無理だと思えば、それは心の奥底に封印しました。
以前、災害で大きな被害を受けた方のインタビューをTVで見たことがあります。
大切な人を失っているのに「でも、私よりもっとつらい思いをしている人がいるから」と
その方は必死に(と、私には見えました。)笑顔を作って
マイクに向かって話していました。
胸が強く締め付けられるような苦しさを感じました。
それから長い年月を経て、私はアンガーマネジメントに出会い、
それをきっかけに心理学を学び、産業カウンセラーの資格を取得しました。
やがて、お困りごとがある方から言葉を聴かせていただくようになって、
かつての自分と同じように、
悩みを人に打ち明けて深く傷ついた経験をお持ちの方が多いことを知りました。
悩んでいる時、そこは暗闇です。どこにも明かりが見えません。
暗闇の中で立ちすくんでいる人に必要なものは、叱咤激励ではなく、
その方が伸ばした手の先にそっと自分の手を添えることではないかと思いました。
私自身もまだ、自分の本当の気持ちを話すことの難しさを感じています。
もしかすると今もどこかで、これはきっと贅沢な悩みなのだろうと
自分の本当の気持ちを心の奥底に閉じ込めている方がいらっしゃるかもしれません。
話すことはできなくても、
せめてそれを「贅沢な悩み」と思わずにいてくれたら、と思います。