ある夜。息子(5歳)が自分の大好きなお菓子をパパに残した時のことです。
そうなんです。「残した」んです。
大好きなお菓子だったのに「パパのために」残したんです。
5歳の子供が、食べたい気持ちをぐっとこらえてパパのために。
私は、私は、この耳で聞き、この目で見た。
息子が「これはパパにあげるの」と言って残したのを。
なのに。ああ、それなのに、それなのに。
バタバタと用事を済ませるために部屋を行ったり来たりしていたその途中で、
テーブルの上にあった、息子がパパのために残した大事なお菓子を
あろうことか、この私は、この母は、ひょいっとつまんでポイッと口に…。
が、私は何も気づかず、何も思い出さず、そのまま家事続行。
ややあって、息子の低い声が。
「このお菓子、誰が食べた?」
聞いたことのないような低い声。しかし、この母は気にも留めず。
「誰って、この部屋にはママと君しかいないじゃん。ママだよ。ママが食べた」
と、そこまで言って、ようやく、やっと、気づいたのでした。
私がとんでもなくひどいことをしてしまったことに。(本当にひどい。)
ひたすら謝りました。家事の手を止め、息子の前に跪き、
ごめん、本当にごめん、ついうっかり食べちゃったの、ごめんね、と。
息子はじっとうつむいたまま。
ああ、子供の心を傷つけてしまった…と深く反省したその時です。
息子がおもむろに顔を上げ、私を見て、
「ママは悪くない。悪いのはお菓子だよ。ママは悪くないよ。」
ええええーーーっ!(涙)
食べた母ではなく、食べられたお菓子が悪いと君は言ってくれるのか。
こんな母を、こんな極悪非道な母を、君はどこまでも庇ってくれるというのか。
心を入れ替えよう。
本気でそう思いました。母としてというより、人として…。